これらは、経営努力ではなく、更に万一の不況時に対する備えもないという証拠を露呈しているようなものであると、私は強く指摘したい。
自社が不況なのは、環境のせいかもしれないが、果たしてこれらが「想定内」であったのか、或いは「想定外」であったのかは、当該企業の経営幹部による意識の問題であると言い切る。つまり、わかってはいたが、放置しておいたということであれば、当該リスクを「保有」していたわけであるから、何らかの対策があるはずであり、自社の内部で処理ができたはず。
しかし実態としては、外部の、他社に対する発注制限をしてきたということになると、自社内部では解決できていないということが明らかである。
つまり、実際にはこれらのリスクに対する対策すら実施していなかったというべきであろう。かの、わが国を代表する企業群においても、揃って「予想をはるかに超えて…」と口をそろえる。口裏合わせなど、みっともないだけであり、そもそも特に自動車産業を中心とした業界では、想定すら甘かったということがいえるのではなかろうか。
要するに、ものづくりにはいかに長けていたとはいえ、海外にまで手を広げるほどの財務的実力がなかったということが明らかにされたと考えていい。
何でも自社の想定の範囲で事が運ぶと思う方がむしろ不自然であることくらい、誰が考えてもわかるということ。それを、今回は想定を超える事態となり…などと、よくもまじめな顔をしてプレスできたものだと呆れるほどである。
つまり、経営努力をしようとしても、結局はムリ・ムダ・ムラの排除はできたとしたところで、相変わらずそれらは下請け等にしわよせをしてきた経験しかないから、自社では抱えきれずに発注を減らすという、いわば自社保護のための他社いじめに繋がっているという現象が、あちこちで見受けられるようになってきた。
ということは、自社が苦しいということに対して、非常に容易に、安易に他社へそれらを転嫁することで、自社は助かるかもしれないが、景気が回復した暁には、誰も戻ってくるという保証はない。こういう危機的状態だからこそ、メーカーや、中心となる発注元がしっかりと傘下の企業を保護してしかるべきであり、これらの恩というものからわが国においては不況を脱した時、更に当該企業のために頑張ろうと、下請けや孫請けが支援に乗り出し、その勢いも増すというものではないのだろうか。
かつてトヨタ自動車は、瀕死の状態にあり、金融機関から見放される状況にあった。その時に手を引いた金融機関は数多くあったが、三井銀行(当時)と東海銀行(当時)のみ、瀕死のトヨタ自動車を見放さなかった。
結果はご存じの通りであるが、トヨタ自動車は、このときの対応を今でも引きずっていて、あの時に助けてくれたところが真なるメインバンクであるという姿勢を崩してこなかった。
だが、金融再編の波というものは酷な面も持ち合わせていて、さっさと手を引いて、二度と門戸を開いてもらえなかった住友銀行(当時)であっても、何とメインの三井銀行と合併してしまったから、三井住友銀行としては取引を断れない状態になってしまった。東海銀行も、現在はその名も残らない三菱東京UFJ銀行となってしまったから、出入りをさせないわけにはいかなくなった。
自社が危機的状態にあった時、助けてもらった恩というものを、ずっと引きずってきた企業が、今度は下請けに対してしわよせをするということが、いかに矛盾した経営判断であるかは、この対金融機関取引においても、象徴されるほどのことではなかろうかと言いたいのである。不況下だからこそ、支援する!ということを、いつの間にか忘れてしまったようだ。
何もこれは自動車産業だけにみられることではない。まるでこれまでが余分に発注していたかのように、不況だからと発注を抑制したら、今度依頼する時までに、受注していたはずの企業が自社で努力を重ねて、更に支援する企業の傘下に入ってしまったとすれば、再発注したくなったところで相手にされなくなるのは、むしろ大手の側になりかねない。
負の連鎖をさせているのは、経営能力のない発注元企業であるということは明らかであって、こういう企業の幹部こそが被害を増幅させているという実態は否めない。
いわば、インフルエンザにかかっている状態であるのに、おとなしく家の中でオペレーションせずに、「移して治そう」としている状態であるといえるのではなかろうか。
意図的に移された側としては苦しむしかないわけだから、こうして負の連鎖は広がっていくことになり、最終的にはあちこちの産業を巻き込んでの騒動となっているわけだ。
だからそもそも不景気だということは否めない事実であろうとも、できる限り自社内部における経営手腕でもって乗り越える策を実行し、他社を可能な限り巻き込まないということが、この連鎖を止める方法であるということを自覚してもらいたいと切に願う。
ジャスト・イン・タイム方式によって、自社の在庫はゼロであっても、一次⇒二次⇒三次下請けとなっていけば、即納が必要なわけだから在庫を抱えている状態であることはわかりきっている。この時点で、自社さえよければ…という企業が、果たしてこの不況の中で他社のことを考えることが可能なのであろうか。
気がつけば、さあ、納品せよ!と号令をかけたところで、誰も振り向かなくなる可能性があるというリスクについて、いかに考えていることか、よくよく熟慮してから実行した方が賢明であろう。このままだと、景気が好転した折には、産業構造が変化しかねないとすら、危機感を感じている次第である。
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